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世界の映画人7人が選ぶ、2020年を象徴する日本映画

Column #Animation #Comedy #Documentary #Drama #History #Mystery #Romance

2021/02/08

新型コロナウイルスの流行により、世界的に大きな打撃を受けた2020年の映画界。日本においても例外ではない。一方で映画人たちの努力と情熱により、そんななかでも数多くの名作が劇場、あるいはオンライン配信で映画ファンのもとに届けられ、また各国の映画祭で喝采とともに受け入れられた。

世界の映画人たちは、昨年の日本映画をどのように見たのだろう? 今回は日本映画をよく知るプロフェッショナルたちに、それぞれが考える「2020年の日本映画を象徴する作品」を挙げながら、振り返ってもらった。第一線で日本映画の紹介に尽力してきた評論家や、各国の国際映画祭、日本映画祭プログラマーの視点から、2020年、そして今後の日本映画のありようが見えてくる。

 
編集:原里実(CINRA, Inc.) メイン写真:(c)2020 NHK, NEP, Incline, C&I

ミニシアターの重要性を再認識した2020年(徐昊辰)


『37seconds』(HIKARI)
『喜劇 愛妻物語』(足立紳)
『精神0』(想田和弘)
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(外崎春雄)
『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(大林宣彦)


2020年、全世界の映画業界は新型コロナウイルス感染拡大の影響によって多大な影響を受けた。日本でも4月~5月の緊急事態宣言下においては、ほとんどの映画館は営業中止となった。なかでもミニシアターは、存続の危機まで迎えている。映画人たちが自発的に始めたクラウドファンディング「Save the Cinema」などのプロジェクトは多くの映画ファンから賛同を集め、過去に例のない苦境にともに立ち向かった。

ミニシアターは、日本の映画文化を語るにあたって避けて通れない。日本国内で公開される年間1,000本以上の新作、その6~7割がミニシアターで上映されている。映像文化の多様性をつねに支えるミニシアターの重要性は、今回のコロナ禍を通し、再認識された。

今年も『37seconds』や『喜劇 愛妻物語』『精神0』などの優秀な日本映画とミニシアターで出会った。HIKARI監督の『37seconds』は2019年に世界中の映画祭で絶賛され、2020年にようやく日本で一般公開。偶然かもしれないが、2020年という特別な年に、主人公ユマの冒険物語を通して世の中に「生きる」意味を強く伝えてくれた。

『37seconds』予告編
 

もちろん、日本映画歴代興行収入を19年ぶりに更新した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』も特筆したい。浮世絵師・葛飾北斎の作品『富嶽三十六景』のなかの『神奈川沖浪裏』を彷彿とさせる「水の呼吸」は世の中を席巻。多くの映画館を救ったばかりか、社会現象を巻き起こし、食品や衣料品、娯楽施設とのコラボレーションなどほかの業界まで波紋を広げた。

最後に、新作公開予定日に天国へ旅立った大林宣彦監督に最大限の敬意を表したい。つねに映像の可能性に挑戦し続けた大林監督の新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』は、最高の映画であり、「映画の映画」でもある。いままで本当にありがとうございました。映画はきっと永遠に続くよ!


徐昊辰
映画ジャーナリスト。1988年上海生まれ。中国の映画誌『看電影』や日本の映画サイト「映画.com」などへ寄稿するほか、北京電影学院でも不定期に論文を発表。2020年から「上海国際映画祭」プログラミングアドバイザーに就任。オンライン映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」プロデューサー。


若手女性監督たちの今後の活躍にも注目(マーク・シリング)


『スパイの妻』(黒沢清)
『アイヌモシリ』(福永壮志)
『私をくいとめて』(大九明子)
『おらおらでひとりいぐも』(沖田修一)
『蒲田前奏曲』(中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘文)


アニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が大ヒットした2020年。日本映画業界にとって過酷な一年ではあったが、これ以外にも喜ばしいことはいくつかあった。

そのひとつが黒沢清監督『スパイの妻』。第二次世界大戦時下の日本で、貿易会社を営む男とその妻が身の危険を冒し、日本軍の残虐行為を暴露しようとする緊張感あふれるサスペンスドラマだ。「第77回ヴェネチア国際映画祭」で銀獅子賞を受賞したこの作品では、「妻」に扮した蒼井優の演技が見もの。自分の信じていた世界観が崩壊し、絶望してゆくさまを見事に演じきった。現代日本に語りかけるような不安かつ不穏な雰囲気をはらんだ同作は、国際映画祭で最高賞を獲得する可能性がまだ日本映画にはあることを証明してみせた。

『スパイの妻』予告編
 

一方、福永壮志監督の『アイヌモシリ』は、現在は主に北海道に暮らす先住民族・アイヌを主役に据えた、地方を舞台とする稀少な映画だ。全メインキャストにアイヌの人々を起用した同作は、まさに新世代のドラマと呼ぶにふさわしい。同等性をうたう社会の片隅に取り残された人々の姿を丹念に追うという、日本の若き映画監督が昨今好んで描こうとするテーマの一例といえるだろう。

『アイヌモシリ』予告編
 

画期的という意味では、『蒲田前奏曲』も同様だ。アンソロジー形式の本作品のプロデュースを担当した松林うららは新進気鋭の女優で、全4話構成のこの作品中3本に出演している。全体を通して地方の自主製作映画現場のリアリティーを描き出しているが、なかでも痛烈なのはセクシャルハラスメントをテーマにした安川有果監督のパートだ。安川は、依然として圧倒的な男性社会である日本映画界に新しい物語と新鮮な視点をもたらし、存在感を高めつつある日本の女性映画監督の一人。彼女たちのこの勢いが、2021年はさらにパワーアップすることを祈りたい。


マーク・シリング
日本映画評論家。「ウーディネ・ファーイースト映画祭」の日本担当プログラムアドバイザーを務めるほか、日本を代表する英字新聞『The Japan Times』には30年以上評論文を寄稿。著書に『Art, Cult and Commerce: Japanese Cinema Since 2000』(未邦訳)。


日本のドキュメンタリーに、もっと世界は注目すべき(マリオン・クロムファス)


『甘いお酒でうがい』(大九明子)
『のさりの島』(山本起也)
『音楽』(岩井澤健治)
『アリ地獄天国』(土屋トカチ)
『さよならテレビ』(圡方宏史)


現実を超えるほどクレイジーな2020年を描く脚本など、書ける映画監督はいないだろう。さすがの園子温監督や三池崇史監督でも不可能に違いない。私たちはみな、結末が見えず神経が擦り減るようなパニック映画に出演中の役者というわけである。

日本映画にとって2020年が過酷な年であったことは間違いないが、劇場公開された圧倒的な映画の多くからは、希望の兆しのようなものも感じられた。そのひとつが、現代の日本の女性映画監督のなかで最も重要な一人、大九明子監督による『甘いお酒でうがい』だ。大九監督はこの映画で、自分の人生の舵を取り、胸を張って生きる40代の独身女性の姿を描いている。

『甘いお酒でうがい』予告編
 

現代の日本で映画を製作することは容易ではない。ただ幸いにも、諦めずに自主製作で映画を撮るクリエイティブな監督たちはいまも数多く健在だ。山本起也監督『のさりの島』は、軽犯罪者が天草に逃げる物語だ。廃れゆく商店街の孤独感をものともしない島民たちの姿が、山本監督の慈しみのこもった眼差しのもとで映し出されている。

2020年の日本のアニメ映画は、大ヒットした『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』だけではない。思いつきでバンドを組むことになった3人の少年を描いた、岩井沢健治監督による異色の音楽アニメーション映画『音楽』も、珠玉のインディペンデント映画にして必見の一本だ。また、現時点では知る人ぞ知るジャンルである日本のドキュメンタリーは、国際的にもっと注目されて然るべきである。土屋トカチ監督『アリ地獄天国』や土方宏史監督『さよならテレビ』では、労働やメディアの世界の厳しい現実が描かれている。

『アリ地獄天国』予告編
 

新型コロナの影響による日本映画界の被害がひどく甚大なものにならないことを祈りたい。2021年の国際映画祭では多くの素晴らしい日本映画に出会えるだろうことを、私は確信している。


マリオン・クロムファス
ドイツのフランクフルト・アム・マインで開催される日本映画祭「ニッポン・コネクション」のディレクター。演劇や映画、メディアを研究する傍ら、1993年に「Exground Filmfest」のプログラムディレクターに就任し、そこで「News from Asia」部門を発足。2000年、約100本の日本映画を上映し、6日間で17,000名以上を動員する映画祭「ニッポン・コネクション」の共同創設者となる。


2011年の東日本大震災は、いまだ語られつづけるトピック(アレックス・オースト)


『破壊の日』(豊田利晃)
『風の電話』(諏訪敦彦)
『音楽』(岩井澤健治)
『MOTHER マザー』(大森立嗣)
『子供はわかってあげない』(沖田修一)


映画はしばしば、その時代の社会に起きていることをそのまま映し出す。今回私が選んだ5本の作品は、扱うテーマはもちろん、その制作過程からも、昨今の出来事を見つめるヒントを示してくれた。新型コロナの感染拡大と関連して、2020年の映画界でひとつの大きな出来事が起こった。

通常は、ある現実の事件が起こってから、企画や制作を経てそれが映画に取り上げられるまでには一定の時間がかかる。この常識を鮮やかに破ってみせたのが、豊田利晃監督の『破壊の日』だ。非常にタイムリーで惹きつけられるストーリー、出演者の圧倒的な演技力、力強いサウンドトラックが融合した本作は、熟練した表現者たちがつくり上げた強烈な傑作といえるだろう。

『破壊の日』予告編
 

世界の国々では忘れられつつとしても、2011年の東日本大震災は、日本映画でいまだ語られつづけるテーマだ。昨年公開された諏訪敦彦監督の『風の電話』もその好例というべき映画である。この映画では、災害が人々の暮らしにいまもどれほど影響を与えているかだけでなく、マイノリティーをめぐって変わりゆく日本の姿についても触れている。彼らの存在は日本で以前よりも可視化されてきつつあるが、依然として受け入れきれていない現状がある。

淡々としたコメディーアニメ作品『音楽』は、製作委員会によるものでなく、制作費の大半を岩井澤健治監督個人が出資し、一部クラウドファンディングで賄いながら完成に漕ぎつけた映画だ。思いつきでバンドを始めた3人の不良高校生の物語は、国内外の観客の共感を呼び、「カメラジャパン・フェスティバル」の「最優秀観客賞」をはじめ、世界各国の映画賞を多数受賞するという快挙を成し遂げた。

『音楽』予告編
 


アレックス・オースト
ロッテルダムとアムステルダムで開催される日本文化の祭典であり、2020年に15周年を迎えた「カメラジャパン・フェスティバル」のディレクターおよび共同創設者。日本映画をこよなく愛する(なかでもジャンル映画とクラシック映画が好み)一方で、日本産ハードコア・パンクのレコードのコレクターでもあり、日本の中古レコード店巡りが趣味。


キーワードは「美しい生存」(洪相鉉)


『Red』(三島有紀子)
『れいわ一揆』(原一男)
『本気のしるし』(深田晃司)
『ばるぼら』(手塚眞)
『ミセスㆍノイズィ』(天野千尋)


アイロニーだが、世界中のメジャースタジオを止めたパンデミックは日本映画人のポテンシャルを露わにした。2020年を象徴する日本映画のキーワードが「美しい生存」である理由がここにある。

第一走者は三島有紀子。ジェイン・オースティンの小説で「人形遊びよりクリケットが好き」と言い放つ主人公を思わせる三島は、『Red』で男尊女卑を破る女性の欲望を描いた。コロナ禍の暗雲にも屈することなく、映画館の扉を開けてシネマを守り抜いた。

『Red』予告編
 

原一男の浩然の気も注目すべきである。劇映画とドキュメンタリー映画の境界を崩す『れいわ一揆』は、弱き立場にある人々をも社会の構成員として取りこぼさない「社会的包摂」の重要性を力説する。

ウイルスは平凡な日常を奪ったが、挫折はまだ早い。「カンヌ国際映画祭」のオフィシャルセレクションに選ばれるなどヨーロッパでも愛される深田晃司の『本気のしるし』で、ファム・ファタールは主人公に呼びかける。「辻さんだって、ちゃんと生きていますよ」と。

これは映画館の外の現実を考えても極めて的確なセリフではないか。確かにわれわれは「生きている」。だからこそ、映画が「第八芸術」であることを想起させるビジュアリスト・手塚眞が、「漫画の神さま」手塚治虫の遺した人類文化の遺産『ばるぼら』を『アイズ ワイド シャット』(1999)のように強烈な傑作へと昇華させた快挙を客席から確認できる。

『ばるぼら』予告編
 

こうしたさまざまな作品たちに感嘆を繰り返した一年の終わり、黒澤明『羅生門』(1950)というレガシーを現代の社会派コメディーに継ぐ天野千尋の『ミセス・ノイズィ』が、日本映画の黄金時代の再来を予見させた。

あらためて確信する。ポストコロナの人類も、孤立ではなく連帯、退歩ではなく進歩を選ぶことを。これは2020年の日本映画が人類に伝える希望でもある。


洪相鉉
全州国際映画祭プログラミングアドバイザー、韓国のウェブメディア「NEWSTOF」専門委員、コメンテーター、翻訳家。東京大学に留学後、「富川国際ファンタスティック映画祭」などでスタッフも務めた。「NEWSTOF」で連載中の映画人インタビューは、韓国随一の人気を誇る。


日本映画に見る世界との対話(マギー・リー)


『海辺の彼女たち』(藤元明緒)
『アイヌモシリ』(福永壮志)
『恋恋豆花』(今関あきよし)
『甘いお酒でうがい』(大九明子)
『浅田家!』(中野量太)


新型コロナウイルスのパンデミック中には日本も停滞したとはいえ、2020年はグローバルな話題に積極的に関与した日本映画が数多く公開された。それらは、身近でありローカルな物語を、普遍的に共感できるテーマへと接続させるものだ。

藤元明緒監督の『海辺の彼女たち』は、外国人労働者問題についての認識を、声高になり過ぎることなく問いかけてくる。厳寒の青森県で漁業関係の不法労働に従事するベトナム人女性の熾烈な軌跡を紡いだ脚本は、ルーマニア映画の傑作『4ヶ月、3週と2日』を彷彿とさせる。ミャンマーからの難民をテーマにしたデビュー作『僕の帰る場所』がそうであったように、人間の思いやりや現実主義的な側面の描き方はいずれも生々しく、そして心温まる。

『海辺の彼女たち』予告編
 

『アイヌモシリ』が描いているのも雪国・北海道で生きるマイノリティーではあるが、彼らアイヌ民族はその地に最も古くから住む先住民だ。何十年もの間、たとえばカナダやニュージーランド、台湾などの外国の映画製作者が先住民の体験にスポットを当ててきた。日本でその風穴を開けたのが、十代のアイヌの少年を描いた福永壮志監督の『アイヌモシリ』である。部族の儀式に対する彼のアンビバレントな感情を描き、先祖代々の歴史と現代社会との狭間で揺れるアイデンティティーを浮き彫りにした。

海外で撮影された日本映画で、『恋恋豆花』以上に異国の文化に違和感なく溶け込み、見る者に恍惚たる歓びを与える作品はなかなか見当たらない。「美味しいもの好きの楽園」と呼べそうな同作は、今関あきよし監督が台湾に捧げたラブレターでもあり、異国情緒偏愛主義に陥ることなく台湾の魅力を引き出している。メインキャストは現地の生活をじっくり学び、都会に暮らす台湾人と真の意味で友情を結んだ、グローバル市民たちだ。新鮮であるという点では、大九明子監督の『甘いお酒でうがい』も負けていない。享楽的な人生を謳歌する独身女性の生き方を描き、因習的なジェンダー観を逆転させた作品である。

『恋恋豆花』予告編
 

パンデミック期のスローガン、「みんなで一緒に乗り切ろう」を体現した映画の筆頭に挙げるべきは『浅田家!』だろう。中野量太監督が取り上げたのは、風変りながらも愛あふれる家族と恋人に支えられた写真家・浅田政志。人生に前向きな彼の姿を通じて、「悩める芸術家」というステレオタイプを打ち破った。浅田は2011年の東日本大震災の被災者に希望を届けるため、おおらかな心で自らの才能を発揮している。


マギー・リー
アメリカ合衆国の雑誌『Variety』のアジア映画評論家チーフであり、『Hollywood Reporter』の前アジア評論家チーフ。これまでにも「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」のプロジェクトマネージャー、「東京国際映画祭」のプログラミングコンサルタント(2010年~)、「CinemAsia Film Festival」(アムステルダム)のアーティスティックディレクター(~2018年)、「バンクーバー国際映画祭」のプログラマー(2017年~)を務めている。


危機の先に、どんな世界が待っているのか?(クリス・フジワラ)


『スパイの妻』(黒沢清)
『風の電話』(諏訪敦彦)
『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』(池田暁)
『空に住む』(青山真治)


2020年に公開された日本映画のなかでも特に興味深かった2本の作品は、「大災害のその後」という永続的なテーマにどう取り組むかを浮き彫りにしている。諏訪敦彦監督の『風の電話』は、2011年3月11日の津波で両親と弟を失い、心に傷を負った高校3年生のハル(演・モトーラ世理奈)の物語だ。映画の終盤、亡くなった両親と話そうと不思議ないわれのある電話ボックスに入り、後ろめたさや自棄の気持ちを吐き出しながらも、生きていく決意を新たにするハル。

黒沢清監督の『スパイの妻』は、1940年の神戸が舞台。ある夫婦(演・蒼井優、高橋一生)が日本の軍国主義のおぞましい暗部に対峙していくストーリーを軸に、互いへの愛情によって引き出される大いなる力を描き出していく。

『風の電話』予告編
 

黒沢の映画では、歴史そのものが「禍」である。正体不明のものに向かって苦闘する運命へと主人公を導く存在の核が見えないまま進行するストーリーは神秘的だ。この「不在」により、謎めいた不穏さがエンディングに至るまで漂っている。諏訪監督の映画のエンディングは、それとは対照的にきっぱりと合理的な解決を提示する。同作で、人が死者と話せるかのようにふるまえる唯一の手段が電話だ。

一方の映画では、大震災の生存者が生き残る意志を見出し、もう一方では登場人物が観客を道連れに不可解な世界をさまよう。その二つのかたちが、おそらくいまの日本映画が災害に対して示す反応ということなのだろう。


クリス・フジワラ
映画評論家、プログラマー。映画関連本に著作・編集で携わるほか、新聞や選集、学術誌に多数寄稿。「エディンバラ国際映画祭」の前アーティスティックディレクター。東京のアテネ・フランセ文化センターをはじめとする多くの施設で、映画上映のプログラム制作も担当している。

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